定番モノなき「モード」
「モード(仏:mode)」とは、不思議な言葉だ。
「流行や様式、スタイル」を意味する言葉だが、ファッションの世界においては、何となく「モード系」や、「モード系ファッション」という言葉が使用されている。
しかし、その実態はどことなく、ぼんやりとしていて曖昧だ。
それもその筈。「モード」には、これといった定番モノが存在しない。
もとい、何となくはイメージされる。「モード」という言葉を聞いて、大半の読者が思い浮かべるのは恐らく、「黒基調で、どこか奇抜な格好」だろう。あえてブランドで例えるならば、「コム・デ・ギャルソン」や「ヨウジヤマモト」のランウェイに登場するような服たちだろうか。
間違いではない。それらは「モード」の一つたり得る。
だが、それでも「なんとなく感」は拭えないのではないか。
例えば「アメカジ」ならば、「リーバイス501」や「アイリッシュセッター」など、分かり易く、具体的なアイテム名を挙げることが出来る。これが「ストリート」ならば、「ニューエラのキャップ」や「エアジョーダン」などになる。それぞれのジャンルにアイコン的存在である「モノ」や、「デザイン」の傾向、または歴史的な「ルーツ」がある。
しかし、「モード」においては、同様のアプローチが通用しない。
なぜなら、「モード」とは、特定のデザインの傾向ではなく、性質だからだ。
流行という意味が指し示す通り、今日のように「ストリート」が「モード」であることすらあり得る。「モード系」として、「アメカジ」や「トラッド」といった系統と同列に並べること自体、現実には的外れなのである。
淀まぬ水の如く、変化を続けるスタイル。時代毎のその最先端の部分に留まれる存在こそ、「モード」と形容するに相応しいモノなのだ。
「モード」は移ろうもの
ますます多様化し、加速度的に変化のスピードが速くなる今日の世界において、「先行者であること」の価値が叫ばれている。奇しくもこれらは、ファッションにおける「モード」に重なる。
なぜなら「モード」とは、「インフルエンサーであること」に他ならないからだ。
ファッションの世界において、スタイルはトップダウン方式で普及することが非常に多い。つまり、「モード」の震源地は必然的に、カリスマ的なデザイナーによって率いられる、ラグジュアリー・ブランドが担う場合が大多数を占める。
そして、今日のモード界においては、ストリート的な要素を取り入れたファッションが、トレンドの中心に位置している。
例えばこれらは、オーバーサイズのドロップドショルダーで仕立てられたシャツやコートが、ゆったりとしたシルエットを描いている。大きなソールのスニーカーや、袖の長いニットも見逃せない。
また、登場する服に、しばしメッセージが刻まれていることも昨今の「モード」だ。ランウェイという場で、デザイナーたちは各々の美と、美に連なる思想信条を表現する。
そして重要なことは、「モード」は時代とともに変質的である、ということだ。
一旦「モード」として評価されたものは、現代では物凄いスピードで他のブランドやセレクトショップ、ファストファッションに影響を与え、拡散される。そして、消費者たちによって広く一般化され、市民権を得る過程を経て、やがては「モード」ではなくなる。
「モード」は、その時代を捉え、今を生きることの証左でもある。
恐れず「モード」を纏ってみよう
変化の時代こそ「モード」を纏ってみては如何だろうか。「モード」に触れることは、やがてあなた自身のスタイルを作り出すかもしれない。
確かに、いわゆる「一生モノ」も良い。定番モノだけで構成される、定番のスタイルも悪くないかもしれない。私も「クラークス」や「リーバイス」をはじめ、私が生まれるずっと前から発売されている服や靴も愛用している。しかし事実、それらも発売されてから幾度となくデザインやディティールのアップデートを繰り返している。
実際には何もかもが変わらないモノなど、存在しないのだ。
また、今現在の「定番モノ」ですら、かつては「モード」と言える斬新さがあったに違いない。それらはこれからも、新しいものの中から生まれ続ける。
もし、流行を追うことに疲れたら、いつだってやめていい。確かに、あなたの持っている「モード」は、いずれそうではなくなるだろうが、大事なことは「モード」でなくなることを恐れない姿勢ではないだろうか。本当に気に入っているものと巡り会えたなら、そのときは「モード」の如何に関わらず、何年も手元に残して良いのではないか。あなた自身の「定番モノ」となり、スタイルの一部となる筈だ。
同時に、手放したいものがまだ着られるなら、それは他の誰かにとって大切なモノにもなり得る。捨てるのではなく売却や譲渡をして、誰かに愛用してもらうという選択肢もある。そうやって人の手に受け継がれることは、とても美しいサイクルだと思う。
元々「モード」が好きな人も、とっつきにくいと思っていた人も、これを機に、「モード」のアップデートを試みては如何だろう。
エディターおすすめの「モード」
間もなく、順次2019-20AWシーズンの「モード」が店頭に立ち並ぶ。ここでは今、「モード」と形容するに相応しいブランドをピックアップしてみよう。
①「オフホワイト」
「オフホワイト」は、いわずと知れたラグジュアリー・ストリートブランドだ。ブランド創業は2014年と非常に新しいが、破竹の勢いを誇る存在だ。
間違いなく、現在の「モード」界の中心だろう。今や世界中の有名ブランドが、コラボレーション相手として指名する存在だ。ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めるヴァージル・アブローは現在、「ルイ・ヴィトン」のアーティスティック・ディレクターも兼任している。
彼による「ルイ・ヴィトン」のコレクションも必見だ。
②「サカイ」
「コム・デ・ギャルソン」等でキャリアを積んだ、阿部千登勢による「サカイ」。
毎シーズン、パリコレクションを沸かせてくれる、近年非常に評価の高いブランドだ。
19-20AWシーズンの「サカイ」が見せてくれたのは、「スポーティーとテーラード、エレガントの融合」と題したコレクション。レディースのプレフォールも兼ねたショーは、サカイらしい緻密なディティールと大胆なシルエットのバランスが美しい。
また、「ナイキ」とのコラボレーションによるスニーカーも注目だ。
③ 「ジル・サンダー」
「シュプリーム」出身にして、自身のブランド「OAMC」も手掛けるルーク・メイヤーと、「ディオール」出身のルーシー・メイヤー夫妻の手掛ける新生「ジル・サンダー」。今シーズンより、メンズの発表の場をパリに移したことも注目だ。
これまでジル・サンダーやラフ・シモンズといった、トップデザイナーに率いられてきた、ドイツ発の名門メゾンだ。そのアイテムはラグジュアリー・ブランド特有のギラギラ感こそ少ないものの、非常に上品で上質。ブランド伝統のピュアなアイテムたちに、ストリート要素が巧みに融合されたスタイルは、間違いなく現在の「モード」と呼ぶに相応しい。
まとめ
「モード」とはどんなものか、何となく掴んで頂けたろうか。
非常に流動的であいまいな存在で、必ずしも一様ではない。きっと、あなたにとって魅力的なものも、そうでないものもあるだろう。数ある中から取捨選択していく中で、「モード」に触れる楽しさを実感して欲しい。
また、捨てずに済むものは捨てず、いろいろな意味で「賢く」使っていくスタイルもまた、現代的なスタンスにおける「モード」かもしれない。いずれにせよ、あなた自身のスタイルを作る自由が、ファッションにはあると考える。
私の寄稿が、あなた自身のスタイルを構築する一助となれたら幸いである。
「モード」アイテム買取価格表
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商品名
THE NORTH FACE(ザノースフェイス)×Supreme(シュプリーム) 17AW バルトロライトジャケット
買取上限参考価格
40000円
カテゴリー
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商品名
patagonia(パタゴニア) クラシックレトロX フリースジャケット ブラック
買取上限参考価格
25000円
カテゴリー
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商品名
THE NORTH FACE(ザノースフェイス) 2018-2019 ベントリックストレイルジャケット
買取上限参考価格
10000円
カテゴリー
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商品名
THE NORTH FACE(ザ ノースフェイス)×HYKE(ハイク)19AW GTX Monster Parka フード付きGORE-TEXミドル丈ダウンコート
買取上限参考価格
138000円
カテゴリー
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商品名
VETEMENTS(ヴェトモン)×Champion(チャンピオン)アントワーププリントラグランパーカー
買取上限参考価格
21000円
カテゴリー